はじめに~ギャバンと言えば~
1979年から毎年のように放送されていたスーパー戦隊シリーズが、2025年放送の「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」で終了し、後番組として「超宇宙刑事ギャバンインフィニティ」がスタートするということで、特撮ファンの関心が高まっている今日この頃です。
「超宇宙刑事ギャバンインフィニティ」が、1982年に放送していた「宇宙刑事ギャバン」の新シリーズであることは最早言うまでも無い話だとは思いますが、シリーズとして久しぶりなので、当時世代でもない限りは馴染みが薄いかと思います。
おそらく、ある一定の世代は、別のルートで触れたギャバンの方に思い入れがある方もいるかと思います。
そう、おもしろFlashで・・・。
おもしろFlashとは?
Youtubeやtiktok等、動画編集や投稿が誰でもできるくらい簡単になった2026年現在では考えられないと思いますが、2000年代は動画製作が、技術的にも機材的にも、まだまだ難しい時代でした。
そんな時代に、容量が軽いため、製作も視聴も簡単にできるものとして流行したのが、Flash動画です。
2000年代当時はネット回線もそこまで速くないし、動画製作ができるスペックのパソコンはかなり高性能でしたが、前述の通りFlash動画は容量が軽いので、個人のホームページに掲載することもできたし、それを閲覧者が見る事も簡単にできました。
そうして、Flash動画を個人製作する人々がおもしろ動画をこぞって作り合っていた時代があったわけです。
(この一時代は、Flash黄金時代と言われています)
急に20年前のネットの話になって困惑している方もいるでしょうが、察しのいい人はもうわかっているでしょう。
ここで生まれたおもしろ動画の中に「宇宙刑事ギャバン」の姿があったのです。
当時世代の方には、前置きをする必要もありませんね。
宇宙刑事ギャバソ
カタカナだとわかりづらいですね。
“ぎゃばん”ではなく”ぎゃばそ”です。
2000年代当時は、”ン”を”ソ”と表記するみたいな、似た形状のカタカナがあったら入れ替えて表記する事が流行っていたんです。
敢えて表記を変えることで、ニセモノ感を強める意図もあったと思います。
まぁ、そういう細かい話は置いといて、まずはこの動画を見てください。
主題歌のイントロに乗って宇宙刑事ギャバンが颯爽と現れ、左手に持つ受験票と合格発表を見比べ、自分の番号が無かったので、レーザーブレードを自らの頭部に突き刺す・・・という、謎の勢いを感じさせる導入ではじまります。
イントロが終わり、歌が始まると、歌詞を所々ツギハギして別の言葉にして、その場その場のシチュエーションに合わせて切り貼りした画像が次から次に表示しながら一発ギャグをかましつづける映像が続いていきます。
当時の時事ネタや、アスキーアートなどを織り交ぜながら、ドラえもんがドラミちゃんに手榴弾を放り投げて爆発させるオチで終わる勢いも良いです。
今だったらAIで上手い事できるんでしょうが、当時はそんなのないので、既存の画像を切り貼りして作っているんですが、この手作り感が、動画全体の空気感とマッチしていて楽しかったです。
内容的には、瞬間的なギャグが次から次に続いていくだけで、かといって個別のギャグに意味があるかというと別にそういうわけでも無いので、中身は無いです。
信じられないでしょうが、2000年代当時はこのテの動画が流行っていたし、私もこれを面白いと思って見ていました。
昔好きだったものを時間が経ってから改めて見ると、新しい面白さを発見したりなんて事があるかと思いますが、このギャバソに関しては、あんまり面白くないです。
心の奥に眠っている中学生当時の感情が蘇ってきて、「面白かったなぁ」と回想することはできますが、2026年現在の感性では、もう楽しめなくなっていました。
“おもしろ”と言われている程、そこまで”おもしろ”くはないということです。
誰しも中学生時代は、ヘンなものを見てゲラゲラ笑ったりするのが青春だったということです。
こんな動画ですが、私にとっては青春の想い出であると同時に、ギャバンの原体験でもあります。
パロディ動画が原体験というのもおかしな話ですが、時代が移り変われば原作を知らずにパロディで先に知ったという例も珍しくは無いです。私にとっては、それがたまたまギャバンだったというわけです。
で、前述の通り、今見るとあんまり面白くはないんですが、それはおそらく、動画全体に一貫したストーリー性が無いからでしょう。
(メッセージ性が無いからこそ面白かったという側面もあるので、これはこれで良いんですが)
ストーリー性は無いしギャバンのヒーローとしてのカッコ良さも無いんですが、動画内で使われている素材が、しっかりギャバン由来のものであることから、原作を茶化して遊んではいるものの、ファンが愛ゆえにやっている、ある種の戯れであると言えます。
ギャバンだけでなく、愛車のサイバリアンも登場しますし、変身前の一条寺烈や悪役のダブルマンなど、直接ギャバンが映っていない画像も素材として使われているので、ギャバンの主題歌を聴いて、「面白そうだからこの歌を題材にしておもしろ動画を作ろう」という気分ではこんな動画は作れないと思います。
ギャバンの画像こそ用意できても、変身前や悪役の画像まで用意しようと思ったら、関係性を理解していないとここまで準備できないからです。
しかし、この面白いものを畳みかけることで視聴者を立て続けに笑わせ続ける勢いが、宇宙刑事三部作の中でギャバソを最もポピュラーなポジションに位置付けることができた要因だとも思っています。
このサイトを読んでいる人で原曲を聴いた事が無い、と言う人はいないかもしれませんが、原曲のリンクも貼っておくので、これで口直ししてください。
宇宙刑事シャリバソ
続いては、前述のギャバソの兄弟分とも言えるシャリバソ。
原作のシャリバンは、ギャバンの後任として地球に配属された宇宙刑事であり、劇中でもゲスト出演するのですが、その設定はシャリバソでも反映されており、動画中にギャバソが登場するなど、それなりに原作の雰囲気が再現されています。
この動画はシャリバソを中心とした内容にまとまっており、ギャバソほど支離滅裂ではないと思います。
瞬間的な面白さはギャバソには劣るものの、シャリバソが口パクをしたり、再生速度が徐々に速くなっていくくだりがあったりと、技術的には凝ったものになっています。
原作同様にギャバンとシャリバンの関係性を物語るかのように、最初ギャバソのタイトルが表示された後に、シャリバソが憤慨しながらシャリバソのタイトルを持ってくるなど、冒頭から茶目っ気のある導入で愛嬌があります。
歌い始めで、ギャバソとシャリバソを相手に戦っている怪人は、シャリバソの意味不明な指示に混乱して頭部が爆発する、という情けない扱いを受けていますが、後年シャリバン本編を観たときに、最終回の最強怪人枠であるサイコラーであることを知り、おもしろFlashでの扱いの割にかなりの強キャラであることがわかって衝撃を受けた事を覚えています。
サビの部分で、唐突にボディビルダーが現れますが、当時はあのテの筋肉ネタが流行っていたので、懐かしいです。
ギャバン同様に、シャリバンも原曲を置いておきます。格好いいんですよ。
企業刑事シャイダー
宇宙刑事がギャバン、シャリバンに続いて三作目のシャイダーが放送されたように、おもしろFlashの宇宙刑事にもシャイダーが存在します。
タイトルは宇宙刑事ではなく、企業刑事となっており、前2作とは明らかに作風が異なるのが特徴です。
イントロは、シャイダーの主題歌をそのまま使いながら、途中に流れる「シューン!」という音に、猫の鳴き声を被せるなど、妙な愛嬌を醸し出しながら、実際のシャイダーのOP映像のように、崖からの転落と画面下からのジャンプをドラえもんで再現するなど、これまでの2作と異なり、原作再現をなんとかやろうという気概が感じられます。
ここで面白いのは、崖から転落するドラえもんはモザイクなのに、画面下からジャンプしてくるドラえもんは、著作権に配慮したパロディキャラクターのオラえもんになっていることです。
当然ですが、いくらパロディ動画とはいえ、ドラえもんを使うと藤子プロから怒られるので、パロディキャラのオラえもんで代替するようになるのですが、この動画製作者都合を自虐的に取り入れていると言えます。
しかし、歌い始まると空気が一変、リストラ候補者の中に自分の名前があることを知ってショックを受けるシャイダーをはじめ、国内外問わず動画製作当時の政治家たちを茶化しながら進行しています。
政治には疎いので、生半可な知識で細かい言及はしませんが、2000年代初期に物議を醸し出していたイラク戦争に対する批判とも風刺ともとれる内容になっており、当時は何の気無しに面白がって観ていましたけど、20年も経ってみると、作者に何か嫌な事でもあったんじゃないかと心配になったり、それとも本当にただ面白半分に茶化していただけなんじゃないかと安心したくなったり、複雑な気持ちになります。
シャイダーで政治批判をしてしまった事を製作者も内心反省していたのか、歌い終わりのところで、「スマソ」(=謝罪のスマン)と一言コメントが添えられているのも、人間味があってよいですね。
そもそも特撮作品って、核兵器に対する不安や恐怖から製作されたゴジラをはじめとして、政治や社会に対する不満みたいなものを具現化するところから生まれてきている節もあるので、ファンメイドの動画とはいえ、宇宙刑事がこのようにして政治批判に用いられるのはある意味の原点回帰とも言えます。
シャイダーも原曲を置いておきますね。Flashだと切り貼りが強すぎて崩されていますけど、明るくて清々しい正統派ヒーローソングなんですよ。
時空戦士スピルバソ
宇宙刑事の話をしているので順番が逆になってしまいましたが、前述の宇宙刑事三部作には、それ以前に製作・公開された前身にあたる動画があります。
それが、時空戦士スピルバソ(すぴるばそ)です。
(動画内に表示されるテキストは、スピルバンになっているので、タイトルはネット民のおふざけかと思いますが)
スピルバンは、実際の放送ではシャイダーよりも後なんですが、このFlash動画ではギャバンよりも先に製作・公開されています。
そのせいか、まだ脂が乗り切っていない感じがします。
歌詞の切り貼りも、原曲の1コーラス目と2コーラス目の組み合わせをしているものの、他の音声を組み込んで別の言葉にしている箇所が無く、原曲の音源のみで作られているなど、編集が控え目な点が特徴です。
画像も、レギュラー3人の画像(スピルバン、ヘレン、ダイアナ)が1種類ずつ使われているだけで、ポーズ違いなどの画像は使っていません。
背景もひたすら白バックで、やはり実験作だったのかなぁと感じます。
何故か、全く関係ない科学戦隊ダイナマンの画像が2枚出てくるのも不思議ですね。
しかし、宇宙刑事三部作に見られるような時事ネタや政治批判・風刺ネタが全くないので、ある意味で一番健全な内容になっているとも言えます。
スピルバンも原曲を置いておきますね。
前述の通り、Flash動画は1コーラス目と2コーラス目の組み合わせになっているので、本来の歌詞がどんな風になっているのかも考えながら楽しんでいただければと思います。
個人的には、前述の4作品の中ではスピルバンの主題歌が一番好きです。カッコイイですからね。
スピルバンは、主題歌以外にも、挿入歌やエンディングテーマもカッコイイんですよ。
さいごに~おもしろFlashが教えてくれたもの~
いつも真面目な記事を書いてばかりなので、たまにはこういうのもいいかなって思って、20年前の特撮ネットミームを振り返る事にしました。
俗に言うインターネット老人会というやつですね。
私がこのおもしろFlashに出会ったのは、中学生の時でした。
あの時は、このおもしろFlashこそが自分にとっての宇宙刑事だったわけですが、しかし、その数年後にはDVDレンタル等で原作の宇宙刑事を観るようになって、そこからは原作と触れている時間の方が長くなったので、今では原作の方が脳内で優位になっています。
主題歌を歌おうとして間違えておもしろFlashの方の歌詞で歌ってしまう、なんてことも無くなりました。
でも、これが正しいのだと思います。
いつまでもパロディを楽しんで、原作を観ていないだなんて方が不誠実だと思います。
動画を作った作者さんは、おそらく宇宙刑事を楽しんでいた当時世代でしょう。
そんな当時世代の人が作ったパロディを楽しんだ自分たちは、今原作を履修して、当時世代同様にギャバンやシャリバンをカッコいいヒーローとして認識し、楽しんでいます。
私たちは、原作を知る事で、動画制作者と同じ目線で宇宙刑事を観ることができるようになったと思います。
2月から、これら宇宙刑事の流れを汲む新シリーズ「超宇宙刑事ギャバンインフィニティ」がはじまります。
ギャバンインフィニティを観る世代は、将来的に先祖であるギャバンを観ることはあっても、おもしろFlashを観ることはないでしょう。
おもしろFlashの宇宙刑事たちは、当時世代や2000年代のネットを過ごしたネット民たちの間で囁かれながら、静かに消えていくコンテンツなのかもしれません。
今でも、新しい特撮ネットミームが生まれ、特撮が元ネタだと知らずにネットミームを使っている人もいます。
これからも、こんな風にして、特撮の歴史と一緒に特撮ネットミームが続々と生まれていく事を楽しみにしています。

