特撮サントラを発売順に振り返る、超歴史2~苦闘編~

特撮サントラを発売順に振り返る、超歴史2~苦闘編~

2025年10月27日

数カ月前に、特撮作品のBGM集に関する歴史をまとめた、「発売順に振り返る、特撮サントラ超歴史~創世編~」という記事を書きました。

特撮サントラを発売順に振り返る、超歴史~創世編~
先日、初代ウルトラマンの歴代サントラについて記事を書きましたが、せっかくなので特撮サントラ全体の歴史についても書いてみたいと思います。 はじめに 特撮サントラ。…
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かなり気合を入れて書いたんですが、これが思いの外鳴かず飛ばずで、続きを書くのもちょっとお休みしてたんですが、ウルトラマンGのBlu-ray BOXのレビューを書くにあたって「交響組曲ウルトラマンG」を聴きまくっていたら、熱が再燃したので、また続きを書いてみようと思いました。

当時を知る先輩方も、まだ生まれていない方も、一緒に特撮サントラの歴史を追体験できればと思います。

1981年~特撮サントラの翳り~

さて、70年代末期のアニメブームに呼応する形で、特撮番組も徐々に現行作品のサントラをリリースする体制が整ってきました。

そんな1981年に放送されていた特撮番組は、「太陽戦隊サンバルカン」や「ロボット8ちゃん」など。

盛り上がっていた1980年に比べると、放送されている作品数は減ってしまい少し寂しいですが、その余波なのか特撮サントラも翳りが見え始めます。

なんと1981年には新作の特撮サントラが発売していないのです。

一応、サンバルカンのBGM集を発売する予定があり、告知もされていたのですが、結局発売しませんでした。(※1)

BGMを担当していた渡辺宙明さんによると「(過去作から流用する前提で)曲数が少なかった」との事です(※1)。少なければ少ないで全曲収録ができたんじゃないかと思うので、勿体なかったかな~とも思うのですが、当時は現在のように未使用曲を含めた完全収録よりも、アルバムとしてのまとまりが求められていたと思うので、致し方ないかなと思います。(その後、サンバルカンのBGMも90年代にMUSIC COLLECTIONで商品化されたので、今では過去の話ですが)

さて、新作の特撮サントラが発売されなかった・・・とは言っても、新作の話です。

旧作の特撮サントラは発売されていましたよ。

その筆頭がゴジラやウルトラマンなどの幅広い世代に人気のあるシリーズです。

ゴジラシリーズ

映画オリジナルBGMコレクション 怪獣王ゴジラ
オリジナルBGM傑作集㊤

音楽:伊福部昭、佐藤勝

コロムビア

CX-7020

1981年4月25発売

当時価格 ¥2,500

70年代末期から幾度となく発売されてきていたゴジラシリーズは、81年も新しいアルバムをリリース。

第1作「ゴジラ」から第8作「ゴジラの息子」までの音楽を収録した上巻と、第9作「怪獣総進撃」から第15作「メカゴジラの逆襲」までの音楽を収録した下巻を同時発売。

上巻では有名なゴジラのテーマが流れる「ゴジラ追撃せよ」をはじめとして、強烈な印象を残す「「怪獣大戦争」メインタイトル」など外せない曲構成であり、下巻ではムーンライトSY3の活躍が思い浮かぶような「怪獣総進撃マーチ」や、沖縄の美しい景色が浮かぶ「「ゴジラ対メカゴジラ」メインタイトル」に、メカゴジラの猛攻撃に手に汗握る「ゴジラ対メカゴジラ」など、至れり尽くせりの内容で満足度の高い内容になっています。

ウルトラシリーズ

ウルトラシリーズからは、「特撮オリジナルBGMコレクション」と題して、初代ウルトラマンからウルトラマン80までの8作品をリリース。つい数年前に放送されていた「ザ★ウルトラマン」と「ウルトラマン80」もすっかり過去作になってしまいましたね。

特撮オリジナルBGMコレクション

ウルトラマンの世界

音楽:宮内国郎

コロムビア

CZ-7140

1981年11月25発売

当時価格 ¥2,000

この「特撮オリジナルBGMコレクション」では、過去のアルバムで「ウルトラQ」とカップリング収録されていた初代ウルトラマンのBGM集がはじめて単体でリリース。

初代ウルトラマンのために作曲された曲の収録数が増え、充実しているかのようにも見えるんですが、フタを空けてみるとウルトラQの曲(しかもウルトラQですら使用されていない未使用曲)が何曲か入っており、もう少しなんとかならなかったのか?と言いたくなる絶妙な代物。

それはそれとしても、科特隊のテーマや戦闘シーンで流れたM5等、代表的なBGMは一通り揃っているので、短所に目を瞑れば及第点でしょうか。

曲数の多い初代ウルトラマンや「ウルトラセブン」は「あの曲が無い、この曲が無い」と感じてしまう面があり、少しもどかしい部分があるんですが、「帰ってきたウルトラマン」以降は割と手堅い収録内容な印象があります。

特に、「ザ★ウルトラマン」や「ウルトラマン80」においては、放送当時に発売されていたアルバムには収録されなかった曲も初お披露目となり、マニア目線では嬉しい面もあったのではないかと思います。

1981年に発売されたその他のサントラ

映画オリジナルBGMコレクション 怪獣王ゴジラ オリジナルBGM傑作集㊦ 1981年4月25日
映画オリジナルBGMコレクション 大魔神 1981年4月25日
特撮・オリジナルBGMコレクション ウルトラセブンの世界 1981年11月25日
特撮・オリジナルBGMコレクション 帰ってきたウルトラマンの世界 1981年11月25日
特撮・オリジナルBGMコレクション ウルトラマンAの世界 1981年11月25日
伊福部昭映画音楽全集1 1981年12月5日
伊福部昭映画音楽全集2 1981年12月5日
伊福部昭映画音楽全集3 1981年12月5日
伊福部昭映画音楽全集4 1981年12月5日
伊福部昭映画音楽全集5 1981年12月5日
特撮・オリジナルBGMコレクション ウルトラマンタロウの世界 1981年12月25日
特撮・オリジナルBGMコレクション ウルトラマンレオの世界 1981年12月25日
TV・オリジナルBGMコレクション ザ★ウルトラマンの世界 1981年12月25日
特撮・オリジナルBGMコレクション ウルトラマン80の世界 1981年12月25日

1982年~孤軍奮闘する宇宙刑事~

さて、1982年。

スーパー戦隊シリーズは、新シリーズ「大戦隊ゴーグルファイブ」の放送を開始しましたが、特撮番組自体は全盛期の70年代に比べると減少の一途を辿っていました。

再放送などもされていたはずなので、テレビで観られる特撮ヒーロー自体が減ってしまったわけではないと思うのですが、70年代の乱発時期に比べると寂しさは感じます。

この頃、子供たちのヒーローになっていたのは、アニメの巨大ロボット達です。

機動戦士ガンダム」のヒットに追いつけとばかりに製作された人型兵器同士の戦争を描いたリアルロボットアニメや、70年代から引き続くスーパーロボットアニメなど、数々のロボットがテレビ画面の中で活躍していました。

玩具の製造技術も上がってきており、劇中同様の変形ギミックを有するポピーの超合金「黄金戦士ゴールドライタン」や、複数体のロボットが合体する「六神合体ゴッドマーズ」などが子供たちの注目の的でした。

しかし、そんなロボットアニメ一強の時代に颯爽と現れたニューヒーローがいました。

その名も・・・

宇宙刑事ギャバン(1982年3月5日~1983年2月25日放送、全44話)

宇宙服のようなコンバットスーツを身に着け、宇宙の科学で作られた宇宙船ドルギランや異次元バイクサイバリアンで宇宙をまたにかける犯罪組織マクーの作り出す魔空空間を飛び回り、必殺のレーザーブレードベムモンスターを一刀両断にやっつける新時代のヒーローです。

巨大ロボットのミニチュア特撮を駆使した戦隊ヒーローとは異なり、異次元空間の中でヒーローと怪人がアクションする合成表現に力を入れた作品でした。

こうやって書くと、仮面ライダーとも違うカテゴリーのキャラクターのように感じるかもしれませんが、宇宙刑事ギャバンで培われたノウハウは平成仮面ライダーシリーズに受け継がれているので、実質的には仮面ライダーの親戚とも言えるかもしれません。

宇宙刑事ギャバンは、東映としても力を入れていた新番組だったので、音楽の作曲には70年代からTVヒーローの音楽を作り続けていた渡辺宙明さんを起用。

しかし、BGM集の売れ行きが芳しくなかったコロムビアから、ギャバンのBGM集の発売はしないと明言されており(※2)、渡辺さんはなんとかして商品化させるために、気合を入れて新時代のヒーロー音楽を作りました。

コロムビアを熱心に口説き落とした事と、ベストヒット曲集のヒットが功を奏し、無事、商品化されることになりました。

テレビオリジナルBGMコレクション
宇宙刑事ギャバン

音楽:渡辺宙明

コロムビア

CX-7072

1982年11月21日発売

当時価格 ¥2,500

黒バックの背景に開いた魔空空間から、颯爽と飛び出してくるかのようなギャバンの姿がカッコイイジャケットです。

A面にアクション曲を、B面に日常音楽を収録することで両面それぞれの雰囲気が統一されています。

この頃は、レコード1枚を30分番組のようにして、A面をAパート、B面をBパートのようにする構成が主流でしたが、それだと通しで聴いた時に間延びしてしまうとも言えるので、A面とB面でコンセプトをきっぱりと分けたのは名アイデアだったと思います。

後年発売されたCD版で聴くと、後半になるにつれて大人しくなってくるのでイマイチな印象がありましたが、A面とB面に分かれたレコードで聴くとしっくりくる構成であることがわかります。

また、このアルバムは、宇宙のテーマ、敵キャラクターのテーマ、アクションのテーマ、メカニックのテーマと、トラック単位で曲のカテゴリを統一しているので、この手のBGM集にありがちな、「あの曲、どこに入ってたっけ?」と探す手間が抑えられているようにも感じます。

宙明さんは、このアルバムの発売にあたって「将来の事を考えると、出しておかないと消えてしまうから」とコメントしていましたが(※1)、「テレビオリジナルBGMコレクション 宇宙刑事ギャバン」の発売が無ければ、現在のように特撮番組のサントラが発売される日常がはじまるタイミングは、少し遅れていたかもしれませんね。

さいごに

今回も、最後まで読んでくれてありがとうございます。

面倒臭くなって途中で帰ってしまった人も、とりあえずページを開いてくれてありがとうございます。

気になるところだけ読んでくれた人もありがとうございます。

前回は、1977年~1980年までの4年間についてお話しましたが、80年代に入ると必然的に発売されているアルバム数が増えてきている都合、情報量が多くなってしうので、1981年と1982年の2年分にしました。

(最初は1981年~1984年で公開してたんですが、流石に長すぎて読むのがキツイので分割してます)

1981年~1982年は、特撮サントラが一時的に下火になる翳りの2年間です。

サンバルカンやゴーグルファイブのサントラが発売されていないことは以前から知っていましたが、とはいえ記事にするために改めてまとめてみると他の特撮番組のサントラも発売されていないので、1978年当時のあの勢いはどこへ行ってしまったのかという失速ぶりです。

知っている事でも形にすることで改めてわかる事っていうのがあるんですね。

参考資料

※1『渡辺宙明大全』辰巳出版刊

※2『宇宙刑事ギャバン ベストヒット曲集&オリジナル・サウンドトラック』ライナーノーツ

VGM db

『Wikipedia』

1983年~1984年のお話は・・・

つい先日、「特撮サントラを発売順に振り返る、超歴史2~苦闘編~」という記事を書きました。 https://shu-yashiro.com/tokusathu_o…
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