目次
はじめに
これまで、特撮に関する記事をいろいろと書いてきましたが、みなさんそろそろ私がBGMにうるさいタイプのオタクであることに感づいてきていると思います。
そうです、私、特撮番組のBGMがとても大好き。
と、いうわけで気まぐれではあるんですが、今回は初代ウルトラマンのBGMが収録されたサントラレコードやCDについて書いていこうと思います。
初代ウルトラマンに限った話ではありませんが、ウルトラシリーズは時代が一回りする毎に、新規でサントラCDがリリースされる傾向にあります。
ウルトラシリーズ同様に時代を経て長く続いている仮面ライダーシリーズは主題歌集こそ何度か発売されるものの、サントラに関しては現行放送中のシリーズしか商品化されないというのだから、破格の扱いです。
しかも、ウルトラシリーズのサントラは、ただの復刻や再販ではなく、収録内容が変わった全く新しいコンセプトの商品として発売されるので、印象もガラリと変わり、それがまた魅力でもあります。
今回のサントラ紹介は、純粋な楽曲レビューというよりも、曲の収録内容によって変わるアルバム全体の印象を中心に解説していくので、そういった部分を楽しんでくれればと思います。
1.ウルトラオリジナルBGMシリーズ① ウルトラQ/ウルトラマン

ウルトラオリジナルBGMシリーズ①
ウルトラQ/ウルトラマン
宮内國郎の世界
キングレコード
SKK(H)-2127
1979年発売
当時価格 ¥1,800
本盤は、初代ウルトラマンのBGM集として初めて発売されたレコードです。
それまで、主題歌集やドラマ盤における曲と曲の合間にオマケとして収録されていたBGMが、初めて単体のアルバムとして発売された事は当時の世代ではないとしても、一つの歴史として嬉しく思います。
しかし、共通したフレーズや作品としての関連性の高さから、前番組のウルトラQとのカップリング収録となっているため、初代ウルトラマン単体のBGMの収録はB面だけに留まっており、少し物足りない感は否めません。
収録内容は、ウルトラマンの第1クールをイメージした構成となっています。
第1話でハヤタ隊員がウルトラマンからベーターカプセルを受け取る場面で使用されたBGM(ウルトラQ 6-6)をはじめとして、第5話のオイリス島のテーマ(H-3)や、第7話バラージの街のテーマ(笛T2)、第10話のモンスター博士の屋敷のテーマ(H2T2)など、全話を通しての使用頻度こそ少ないものの、初期エピソードの舞台にマッチした印象深いBGMが収録されています。
その他はほとんどのエピソードで使用された戦闘BGM(M5)や、科特隊のテーマ曲など、短い収録時間ながら要所は抑えられている印象。
ジャケットは見開きの解説書になっており、アルバムの概要解説や、ウルトラQ、ウルトラマンの作品解説、収録曲解説、怪獣たちの紹介に、作曲家である宮内國郎氏のインタビューなどあり、充実した内容です。
一方、収録曲解説で、BGMの使用箇所が実際に使用されていない場面で使用されたと記載されていたり、劇中で2回ほどしか流れていないのに、あたかも何度も使用されていたかのように解説されていたりと、当時さながらの誤った解説があるのが、今見るとモヤモヤして妙な気持ちになります。
2.特撮オリジナルBGMコレクション ウルトラマンの世界
ザ★ウルトラマンの人気に押され、ウルトラマン80が久しぶりの実写特撮作品として放送した翌年にリリースされたのが本盤です。
ジャケットで取っ組み合うウルトラマンとメフィラス星人の姿がよいですね。
この特撮オリジナルBGMコレクションは、セブン~80までのシリーズも発売されていますが、どれも逆三角の枠の中でウルトラ戦士と怪獣が戦っているレイアウトに統一されており、コレクション性があります。
本盤はトラック数が少なく、その分1トラック内の収録曲数が多いのが特徴です。
おそらくですが、あの当時は、アニメのサントラを、ただのBGM集としてではなく、組曲と称して音楽作品として印象付けたリリースをしていた感があるので、そういうのを意識していたんじゃないかなと思います。
曲構成も異色で、科学特捜隊やウルトラマン、怪獣・宇宙人など、ある程度近しい印象の曲をカテゴライズして固めています。ストーリー性よりも、キャラクターや現象に関するイメージを表現しているようです。
所々、劇中未使用曲があり、新鮮な感じがする反面、ウルトラQのBGMも収録されています。
ウルトラQのBGMはウルトラマンでも使用されているので、タイトル通りウルトラマンの世界を構成する要素であると言えなくもないのですが、ウルトラQでもウルトラマンでも未使用のまま終わったBGMも収録されているので、これは果たしてウルトラマンの世界なのか?と疑問に思う部分もあります。
なお、このアルバムは、コロムビアのレコードをCDで復刻するANIMEX1200シリーズの1枚として2005年にも発売されているので、現在でも聴こうと思えば聴きやすい一枚ではあるんですが、2005年ってもう20年前になるんですよね。
私がこのアルバムをCDで購入してから20年も経ったと言うことです、歳をとったものです。
3.ULTRA Original BGM Collection 2 ウルトラマン

ULTRA Original BGM Collection 2
ウルトラマン
キングレコード
K22G-7220
1984年発売
当時価格 ¥2,200
1984年。ウルトラシリーズの新作TVシリーズは、帯番組のアンドロメロスのみしか放送されていませんでしたが、現在の光の国のイメージを作り上げた映画「ウルトラマン物語」でウルトラ6兄弟が大活躍していた頃のアルバムです。
この当時は、アニメが放送されれば、まず間違いなくサントラが発売されていた時期であり、メーカーのサントラ慣れを感じる作りになっています。
ウルトラマンのサントラレコードとしては3枚目ですが、当時にしては作品の世界観をよく再現できていると思います。
1トラック当たりの曲構成も、ブリッジ音楽に始まり、次に予兆を感じさせる静かな、または不気味BGM、そして最後に暴れる怪獣や科特隊の活躍をイメージしたアクション曲、と言った具合に物語性に溢れています。
ウルトラマンの神秘性を表現したジャケットイラストも印象的。
解説は、曲解説や作曲者インタビューだけでなく、科学特装隊メンバーや秘密兵器の紹介、音楽の発注リストなど、情報量も豊富。
また、アルバムの概要説明に関しては、ウルトラマンと同時期に放送されていた特撮ヒーロー番組「マグマ大使」についての解説もあり、リアルタイムの雰囲気を知っている方には懐かしさを感じる内容になっています。
初回生産分には、再編集映画である「長編怪獣映画ウルトラマン」の復刻ポスターが特典として付属し、満足度も高い、資料的価値も含まれた名盤であると言えます。
4.空想特撮シリーズ ウルトラマン 総音楽集
ウルトラマン放送開始から25周年を迎える1991年。年号は平成に変わり、新たなる新番組ウルトラマンGがオーストラリアで生まれようとしていた時代に発売されたのが、この総音楽集です。
本盤は、その当時発見されていたウルトラマンのBGM用テープに収録されている曲のうち、実際に劇中で使用されたものを全て収録しています。
なんといっても驚きなのが、テープが発見されていないBGMを、本編の音声からセリフを抜いたMEテープから抽出して収録していることと、ウルトラQとウルトラマンを通じて度々使用されていた東宝特撮映画「ガス人間第1号」のBGMをほぼ全て収録していることです。
しかも、ガス人間のBGMで実際にウルトラシリーズで使用されたものは半分ほどなので、オマケ収録にしてはかなり待遇が良いです。
30年も前のアルバムですが、収録曲のボリュームは、後続のミュージックファイルやウルトラサウンド殿堂シリーズにも引けを取りません。
むしろ、安く手に入るのであれば迷わずコレを手に取った方がお得と言わざるを得ません。
(値段に目を瞑れば、最高傑作は2016年発売のCDーBOXですが・・・)
また、このアルバムはウルトラマンBGMにおいてはある種の革命も起こしています。
そもそも、BGMには個別の曲名が無く、管理用の通し番号しかついていないのですが、この総音楽集で初めて曲名が付与されました。(後にジャックという名前が付けられた帰ってきたウルトラマンのようですね)
ここで付与された曲名はほとんど公式扱いになっており、シン・ウルトラマンのEDクレジットやサントラでは、このアルバム収録時の曲名で記載されているんです。
余談ですが、ジャケットやブックレットに使用されているウルトラマンの写真は、全て第1クールのAタイプスーツのものであり、ヒーロー性が確立する前の得体の知れない謎の宇宙人の趣が感じ取れて良いです。
amazonだとほぼ当時価格ですが、中古ショップだと思いのほか安くなっているので、探してみる事をオススメします。
5.ウルトラマン ミュージックファイル
TDG三部作と言われるティガ、ダイナ、ガイアの放送が終わりを迎えようとしている時期に発売されたのが、このミュージックファイルです。
ウルトラマンのサントラアルバムとしては、CDとしては2点目ですが、レコードから通算すると5番目のアルバムです。
文字数の関係で割愛していましたが、セブン以降他のウルトラシリーズについても同様に何回もアルバム化されています。
本盤の特徴は、ウルトラマンのBGMを、純粋なBGMテープからのみ収録しており、ウルトラQからの流用曲やMEテープからの抽出曲は未収録としているところでしょう。
言うなれば総音楽集の廉価版という印象が強いのですが、特筆すべき点は、これまで1トラックに複数曲収録されていたサントラとは異なり、できる限り1曲1トラック構成になっていることです。目的のBGMがすぐ再生できるので非常に聴きやすいのです!!
なお、総音楽集でも収録されなかった未使用曲については、別売の未収録編でMEテープからの抽出曲と共に網羅されているので、なんだかんだ言いながら総音楽集と同じポテンシャルは備わっています。
じゃあ、最初から総音楽集を買えばいいじゃないかという指摘も飛んできそうですが、この盤は楽曲解説がとても充実しているので侮れません。
総音楽集は、どこで使用されたか程度の説明だったものが、このミュージックファイルは、全曲ではないにせよ主要なBGMに関しては楽器編成や使用頻度などについても記載されており、少し踏み込んだ内容になっています。
余談ですが、VAPはウルトラシリーズ以外にも60〜70年代のドラマや特撮作品など商品化に恵まれていなかったBGMを度々商品化しており、ファンにはありがたいメーカーであります。
私も、案外このVAPのサントラには助けられています。
昭和作品に触れ、そのサントラが聴きたくなった時は、必ずあなたの助けになることでしょう。
6.ウルトラサウンド殿堂シリーズ ウルトラマン オリジナルサウンドトラック
2006年。ウルトラマンメビウスの放送で、昭和のウルトラマン達がテレビに再び姿を現すのに呼応するかのように発売されたのが、このウルトラサウンド殿堂シリーズです。
既に、総音楽集やミュージックファイルなどでウルトラマンのBGMは可能な限り商品化されてきましたが、このウルトラサウンド殿堂シリーズではBGMの網羅よりも、物語再現に重きを置いた内容となっています。
曲目リストは歌モノを除いた全てが、実際のエピソードのサブタイトルとなっているのは総音楽集と同じですが、曲構成はウルトラマン用のBGMだけでなく、ウルトラQからの流用曲や、マスターテープの存在しないMEテープからのBGMなど、ありとあらゆるものを組曲のように繋いでストーリーを表現することに努めているのが特徴です。
劇中で繰り返し編集されたり、一部分だけを抜き出して使用された曲は、その通りに編集したものがフルバージョンとは別に収録されるなど、ファンサービスも素晴らしいです。
過去の総音楽集にしてもミュージックファイルにしても、純粋なウルトマン用のBGMではないウルトラQやMEテープのBGMは、別商品・別ディスクに分けて収録されていましたが、本盤ではそれらが一緒くたになることで、一枚のアルバムとしての完成度を高めているとも言えます。
思いのほか安価で、現在でも入手しやすい商品なので、ウルトラマンBGMの入門盤としてオススメしたい一枚です。
ちなみに、ウルトラサウンド殿堂シリーズはyoutubeで聴くことができるので参考までに聞いてみてください。
7.ウルトラQ ウルトラマン 快獣ブースカ 宮内国郎の世界
いよいよ最新にして総決算的なアルバムです。
作曲家の宮内国郎氏が、ウルトラマンと同時期に楽曲制作を担当した作品群を可能な限り網羅しているのが、この7枚組CD-BOXであります。
正直なところ、収録曲自体は過去に発売されたサントラとほとんど重複しているので、目新しさは無いのですが、ボリューム感に圧倒されて、何故だか1万2千円が安く感じてしまいます。
勿論、つい最近ウルトラQやウルトラマンに触れた方がBGMも聴いてみたくなった時に手を出せる金額では無いので、かなりのマニア向け商品と言えます。
総音楽集と同じ順番で収録されていますが、1曲1トラックに分解したものとなっているので、特定の曲を聴きやすい構成になっています。
ただし、曲解説は一新されており、過去サントラのブックレットが霞むほどに豪華です。
ウルトラQの楽曲解説部分で、ウルトラマンへの流用例についての記述もあり、BGMマニアとしては非常に嬉しい内容でした。
さいごに
いかがだったでしょうか?
ウルトラマンBGMも奥深い歴史が楽しめたと思います。
ウルトラマンのBGMは、マスターテープが紛失しているものや、出所が不明なものもあり、ファン泣かせな代物ですが、こういったサントラを制作・販売している方々は、見つからないBGMを劇中の音声テープから抽出したりするなどして、半ば強引ながら、CDで聴ける状態にまで漕ぎ着けているものもあり、頭が上がらないのと同時に、ものすごい執念を感じます。
55年近く過去の作品ではあるものの、かつて一時代を築いた作品の構成素材が、時の流れに飲まれて風化してしまわないうちに、なんとかして記録に残していこうという熱意を1ファンとしてこれからも応援していきたいですね。