第1話「壁ぬけ男」

キングアラジンと名乗る怪盗が、次から次に財宝を盗んでしまうが、警察がどんな警戒態勢を敷いても、壁をすり抜けて消えてしまうので、なかなか捕まえられない!!
SRIはどのようにして立ち向かうのか!?
・・・というあらすじです。
本放送は1968年9月15日。数々の宇宙人との戦いで傷ついたウルトラセブンがM78星雲に帰った翌週に放送した新番組です。
脚本はウルトラセブンでエンタメ回、シリアス回と巧みに活躍した上原正三氏。監督は、ウルトラマンで数々の娯楽回を担当した飯島敏宏氏。
物語
怪奇大作戦というと、ファンの皆さんの感想から、どうにも小難しくて暗い感じの作風だという先入観がありますが、第1話はまだまだ初期製作分ということで、“科学的なトリックを使う怪盗を捕まえる”という、割とエンタメ寄りのわかりやすい内容になっています。
アバンタイトルで事件が発生し、AパートでSRIのメンバーをテロップ付きで紹介しながら、捜査・推理・犯人の最期・・・という段取りをテンポ良く見せていく構成は、怪奇大作戦大全でも絶賛されています。
主人公チームのメンバーが冒頭で紹介されるのは前番組ウルトラセブン第1話の流れを汲んでいますが、テロップ付きというのが新しい感じがします。
SRIは科学特捜隊やウルトラ警備隊のような専用の制服が無い(ただし戦闘用のユニフォームはある)ので、堅苦しい印象を受けてしまいがちですが、全員キャラが立っているのと、的矢所長の温和な性格のおかげで、科学特捜隊とウルトラ警備隊の中間と言っていいぐらいの、大人のラフさを感じられるチームに仕上がっているように見えます。
SRIのメンバーではないものの、度々SRIに入り浸っては的矢所長のコーヒーを自分のものだと勘違いして飲んでしまう町田警部も良い味を出しています。
しかしながら、牧歌的な雰囲気の中に犯罪者側の悲哀も盛り込まれており、決してやっつけられるだけの悪役になっていないところも良いです。
その割を喰らったというか、唐突に出てきて何の性能も描写されないので、ただ羽織っただけになってしまっているSRIジャケットや、デザインが個性的なだけで大して活躍もしないトータス号など、SRI独自のビジュアルを有したガジェットの扱いがイマイチなところもあったので、今後のエピソードでの活躍に期待したいです。
怪盗キングアラジン
今回は、壁ぬけ男こと怪盗キングアラジンが科学トリックで財宝強奪という科学犯罪を遂行します。
キングアラジンの壁ぬけトリックは、鏡のように周囲の景色を反射する繊維を持つマントを羽織る事で、あたかも壁をすり抜けているかのような錯覚を起こしていただけということが語られます。
が、最初聞いたときは何を言っているのか正直よくわからなかったです。
2回くらい観直して、やっと、壁ぬけをしているかのように見えているだけで、実はずっとそこにいたということがわかりました。
でも、これだと、壁ぬけをしているように見せているその瞬間はキングアラジン本人は壁の中に入っているどころか、その場にいるので、掴みかかったらスグにバレそうなものですが・・・登場人物はご丁寧に壁をすり抜け終わるまで固唾を飲んで見守っているんですよね。
壁をすり抜け終わって、「おぉー!!」と驚いている隙に歩きでスタスタと帰宅しているわけです。
こういう事言い出すとアバンタイトルで事件が解決しちゃうので、元も子も無いんですが。
キングアラジンの正体は一鉄斉春光(いってつさいしゅんこう)という奇術師。
過去に、水中檻からの脱出に失敗してから失墜してしまい、再び名声を得るために奇術トリックで怪盗行為をしていたとうバックボーンがあります。
奇術師というのが科学トリックとして面白いですね。
そもそも、怪奇大作戦が何故怪奇路線なのかと言うところで理由の一つとしてあがってくるのが、水木しげるのゲゲゲの鬼太郎にはじまる妖怪ブームだったわけですが、SRIが立ち向かう科学トリックの正体が科学者ではなく奇術師とすることで、どことなく妖怪的なオリエンタルな香りがただよってくる名采配だと思います。
最期はかつて失敗した水中檻の再現として、鉄箱で水中に潜り、幻聴の歓声を浴びているうちに水圧に潰されて絶命する結末を迎えます。
財宝自体が目的なのではなく、かつての栄光を取り戻したいがために犯罪行為に手を染めた挙句、自らの奇術で命を落とすという、あっけない最後を迎えるも、ただ警察組織を振り回していただけでしかなかったという空虚感も含めて、これまでの円谷には無いビターさがあります。
特撮
怪奇大作戦は、これまでの怪獣路線とは異なるものの、特撮を売りにした円谷なので、ミニチュアや合成などを、過去作よりもドラマに溶け込ませる形で多用しています。
第1話では、キングアラジンが壁ぬけを行う時の映像や、キングアラジンのセスナを追う町田警部のヘリなどの映像に特撮が使われています。
セスナから鳩をばらまく場面では、ミニチュアのセスナの周囲を鳩の群れがパタパタと舞うのですが、羽ばたきが確認でき、かなりよくできています。
ミニチュアのセスナに実景の鳩を合成しないとこんなことできないんじゃないかと思うんですが、その辺は怪奇大作戦大全でも解説があって、その通りだったんですが、とてもキレイに合成できていてすごいですね。
ちょっとここで残念なのは、鳩を放って気を逸らせた後にキングアラジンがセスナから脱出していた、ということで、SRIが記録映像でその瞬間をとらえていたのですが、肝心の追跡シーンの映像ではキングアラジンが脱出していないので、ここちゃんとやっといて欲しいなぁと感じました。
放送当時は映像ソフトも配信も無いので、こんな風にチェックできないので、そこまで入念に作る必要は無かったといえば無いのですが。
また、ラストで一鉄斉春光が入った鉄箱が水圧で潰されていく場面も迫力があってよかったです。
怪奇大作戦の特撮はドラマの中に組み込まれることを意識した造りになっていますが、まさにこの圧壊する鉄箱は、キングアラジン=一鉄斉春光が過去の栄光にすがりながら絶命する姿とダブることで、物語を大いに盛り上げたと言えます。
そして見逃せないのは、タイトルバックやエンディングで使用された壁ぬけ男の文字です。
これは、ウルトラQのやウルトラセブンのタイトルバックでも使用されたのと似たような手法で撮影されていますが、タイトルバックではカラフルなドロドロした液体が集まっていき文字が完成し、逆にエンディング映像では文字が崩れていく様子が描かれています。
前者は、直前のアバンタイトルで壁ぬけを行うキングアラジンを見せることで、文字通り壁ぬけ男のアイデンティティが確立していく瞬間を表現し、後者は壁ぬけ男の消滅を物語っていると言え、本編に直接絡まない特撮部分にも本編の内容を示唆する働きがあるのではと考えることができます。
まとめ
怪奇大作戦の方向性をシンプルに映像化した、いい感じの第1話でした。
内容もわかりやすいと思います。
しかし、怪奇大作戦の本領を発揮しているとは言い難い面もあり、良くも悪くも設定解説編という印象。
決してつまらないわけではないですが、怪獣が大暴れするウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブン・・・と言った派手な怪獣モノに比べるとイマイチ地味に見えてしまうのは致し方ないかな、という感じでした。

